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何が起きたのか
2026年1月14日、エジプトで「住宅ユニット(分譲住宅)の価格をどう決めるか」の“基準づくり”に向けた合同委員会を立ち上げる方針が報じられました。目的は、不動産市場の規律(ルール)を整え、過度な値下げ合戦を抑え、透明性の高い価格形成を促すことです。
発言したのは、エジプト産業連盟(FEI)傘下の不動産開発関連組織の責任者であるオサマ・サード・エルディン氏(Osama Saad El-Din)です。
委員会の進め方と、参加する主要人物
初回会合は「翌週」、財務省(Ministry of Finance)本部で開催する予定とされ、税制政策・改革担当の財務次官ラミー・モハメド・ユセフ氏(Ramy Mohamed Youssef)と合意した、と報じられています。
会合の議長は、タレク(タレク/タレック)・シュクリ氏(Tarek Shoukry/Tariq Shukri)。同氏はFEIの不動産開発関連組織の会長として報じられています。
参加予定のデベロッパー(開発会社側)として、記事では次の名前が挙げられています。
- アハメド・アミン・マスード氏(Ahmed Amin Massoud)
- アムル・ソリマン氏(Amr Soliman)
- オマル・ヒシャム・タラート・ムスタファ氏(Omar Hesham Talaat Mostafa)
- モハメド・アルボスタニ氏(Mohamed Al Bostany)
- モハメド&マフムード・ターヘル氏(Mohamed and Mahmoud Taher)
狙いは「コンパウンド(囲い込み型の住宅地・複合開発)内の分譲住宅価格」を、一定のルールで“整理して決められるようにする”こととされています。
VAT(付加価値税)の税率は「14%維持」。ただし既存案件は5%を継続
今回のニュースで投資家にとって重要なのが、建設・請負まわりのVATの扱いです。
- 財務相は、VAT(付加価値税)を14%のまま維持する方針を確認
- 一方で、税制変更前から進行しているプロジェクトは、完工まで5%の税率を維持する(経過措置)
と報じられています。
背景として、エジプトでは2025年7月18日付近を境に、建設・請負(contracting/construction)分野の税扱いが「5%相当」から「通常VAT14%」へ移る動きが整理されてきました。
この変更は、これから新規に動く案件ほどコスト構造(原価・資金繰り)に影響が出やすい一方、既に走っている案件は税率を急に変えると採算が崩れやすいため、“完工まで旧税率を維持する”考え方が取られた、という文脈です。
「用語」をやさしく整理
- VAT(付加価値税):日本の消費税に近い間接税です。取引の段階ごとに課税され、最終的には消費に負担が寄りやすい仕組みです。
- コンパウンド(compound):ゲートや警備などを備えた囲い込み型の住宅地、または住宅・商業・サービスが一体の複合開発を指すことが多い用語です(エジプトでは一般的な開発形態として頻出します)。
- 価格ダンピング(price slashing):短期の売れ行きを優先して過度に値下げし、市場全体の価格秩序を壊す行為です。今回の委員会は、これを抑える狙いがあるとされています。
- NUCA(New Urban Communities Authority):新都市開発を担う当局で、住宅・都市開発の計画やインセンティブ(優遇)に関与します。記事では「優遇措置を求めるならNUCAへ」という趣旨が触れられています。
ニュースの背景。なぜ今「価格基準」なのか
エジプトは新都市開発や外国資金の呼び込みを進める一方、インフレや為替変動などでコストが読みづらく、分譲価格が“案件ごとにバラつきやすい”環境になりがちです。そこに値下げ合戦が起きると、消費者側も投資家側も「適正価格が分からない」状態になりやすい。
こうした状況で、業界団体と財務当局がテーブルにつき、価格決定のガイドライン(目安・手順)を整備しようとしている点が今回のポイントです。
また、エジプトは近年、海外からの大型投資を呼び込みながら都市開発を進めています。たとえば、湾岸資本による大規模観光・不動産開発の報道もあり、都市・住宅政策と資金流入は強く結び付いています。
ニュースの見解
日本人のエジプト不動産投資家にとっての「3つの影響」
- 新規案件の原価上昇リスクが“見える化”される
VAT14%が原則として維持されるなら、「これから立ち上がる案件」は建設・請負コストにVAT14%が乗る前提で収支を組む必要が出ます。デベロッパーの販売価格に転嫁される可能性があるため、購入検討時は「価格にVATや税務コストがどう織り込まれているか」を確認する重要性が増します。 - “既に動いている案件”は、価格の急変が起きにくい可能性
税制変更前に始まったプロジェクトは完工まで5%税率を維持する方針が示されており、途中で税負担が跳ねて採算が崩れるリスクを抑える意図が見えます。日本人投資家が「竣工前の分譲」を検討する場合、当該案件が経過措置の対象かどうかで、資金計画の読みやすさが変わります。 - 価格ガイドラインは“市場の健全化”に寄与し得る一方、短期の値上げ要因にもなり得る
価格基準づくりは、極端な値下げ合戦を抑え、買い手にとって比較しやすい市場へ近づく効果が期待されます。
一方で、もしガイドラインが「最低価格に近い運用」になれば、短期的には値引き余地が縮み、価格が下がりにくくなる可能性もあります。投資家としては、
- 「価格算定の基準」が原価ベースなのか、需要(人気エリア)ベースなのか
- ガイドラインが拘束力の強いルールなのか、目安(推奨)なのか
を見極める必要があります(現時点では“委員会で策定する”段階の報道です)。
実務でのチェックポイント(購入前に確認したい)
- 物件(プロジェクト)の開始時期:5%の経過措置対象かどうか
- 売買契約書・支払明細:価格に含まれる税や手数料の範囲(VAT相当の扱い)
- デベロッパーの販売戦略:ガイドライン導入後に「値引き条件」「支払スケジュール」が変わる可能性
- NUCAが関与する優遇策の有無:特定エリア・政策対象でインセンティブが付く余地
総合すると、今回のニュースは「不動産価格の決まり方」と「税コスト(VAT)」が制度面から整えられていくサインです。日本人投資家目線では、短期の値動きよりも、税率と価格ルールの“前提”が固まるほど、中長期で投資判断がしやすくなる可能性があります。その一方で、新規案件はVAT14%前提の価格になりやすいため、これから買う人ほど「同じエリアでも、案件の開始時期で条件が違う」点に注意が必要です。
