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2025年12月15日、地中海地域の有力メディア「Famagusta Gazette」は、エジプト政府が不動産税法の大幅な改正を準備していると報じました。今回の改正案は、国内の住宅所有者の負担軽減と、不動産投資の活性化を目的としたものです。
発表を行ったのは、エジプトのアハメド・コジョク財務大臣(Ahmed Kojok)です。同氏によると、最も大きな変更点は、自家用住宅に対する不動産税の非課税枠が2倍に引き上げられることです。
具体的には以下の通りです。
- 非課税となる住宅価格の基準が
約200万エジプトポンド → 約400万エジプトポンドに引き上げ - 米ドル換算で約8万3,000ドル相当までが非課税対象
- 電子決済(オンライン支払い)の導入
- 一定条件下での延滞金・罰金の免除
- 延滞金は「元の税額を超えない」上限を設定
エジプトの不動産税は、日本と仕組みが異なります。市場価格(売買価格)ではなく、「年間純賃料価値」に対して課税される点が特徴です。
- 税率は年率10%
- 賃料価値は5年ごとに再評価
- 修繕費や保険料は控除対象
- 現行制度では、年間純賃料が24,000ポンド未満の住宅は非課税
今回の改正案では、国家的危機や自然災害時に内閣判断で不動産税を一時停止できる仕組みも盛り込まれました。また、評価額に対する不服申し立て(アピール)手続きも簡素化される予定です。
これらの措置について、政府関係者は
「国民の金銭的負担を軽減し、制度の透明性を高めることが目的」
と説明しています。
なお、この改正案はすでに内閣の予備承認を得ていますが、
- 議会(国会)での可決
- 大統領による署名
という正式な手続きを経て、初めて施行される予定です。
改正の背景
この税制改正の背景には、エジプトが直面する複数の課題があります。
- インフレ率の上昇による国民負担の増加
- 外国直接投資(FDI)の呼び込み強化
- 新行政首都や沿岸部リゾート開発など、不動産市場の拡大
特に近年のエジプトは、湾岸諸国や中国、欧州からの資本流入を重視しており、「税制の分かりにくさ」や「コスト不透明感」が投資の障壁になっていました。今回の改正は、こうした不安を取り除く狙いもあります。
ニュースの見解
今回の不動産税制改正は、日本人の海外不動産投資家にとっても前向きな材料といえます。
まず、非課税枠の大幅引き上げにより、中価格帯の住宅投資における保有コストが明確に下がる可能性があります。エジプトでは、首都カイロ周辺や紅海沿岸のリゾートエリアで、400万ポンド前後の物件が多く、日本人投資家が検討しやすい価格帯と重なります。
また、
- 延滞金の上限設定
- 電子決済の導入
- 税評価への異議申し立ての簡素化
といった制度整備は、「海外投資家にとっての不透明リスク」を減らす動きです。これは、長期保有型の賃貸投資を考える日本人投資家にとって重要なポイントです。
一方で注意点として、
- 制度はまだ確定していない
- 実際の運用は地域差が出る可能性がある
- 外国人投資家への適用範囲の詳細は今後の法文確認が必要
といった点は慎重に見極める必要があります。
総合的に見ると、今回のニュースは
「エジプトが不動産投資を国家戦略として本格的に整備し始めているサイン」
と評価できます。今後、新行政首都や観光開発エリアへの投資を検討する日本人投資家にとって、エジプト市場は中長期的に注目度が高まる可能性があるでしょう。
