エジプト「新首都」モノレール11月9日開業。自動運転モノレール開業でNACは実用段階へ

最新ニュース

エジプト運輸省は、カイロ東部と新行政首都（NAC）を結ぶ「イースト・ナイル・モノレール（新行政首都モノレール）」を2025年11月9日（日）に開業すると発表しました。区間はナスル・シティのスタジアム駅から新行政首都のジャスティス・シティ駅までの約56.5km・22駅で、エジプト初のモノレールになります。開業当初は試運転のため乗客を乗せない運行から開始されます。

駅はプラットフォームドア、12〜14基のエスカレーター、4基のエレベーター、視覚障害者向け誘導路、案内表示や音声アナウンスなどを備え、運転速度は最大80km/h、1編成あたり約560人、方向別で最大1万人規模の輸送能力を想定しています。さらに、スタジアム駅で地下鉄3号線、芸術文化都市駅でLRT（ライトレール）と接続し、都心から新開発地域への乗り継ぎ性を高めます。運転は新行政首都内の中央制御センターで集中的に管理される自動運転方式です。なお、ナイル川西岸側にも別系統のモノレール建設が進んでおり、両線合計で約100km・35駅規模のネットワークとなる計画です。

モノレールの設計・建設・運営は、アルストム（旧ボンバルディア輸送機部門を統合）を中心に、エジプト大手のオラスコム・コンストラクション、アラブ・コントラクターズのコンソーシアムが担当し、2019年に設計・建設と最長30年の運営保守契約（総額約45億ドル超）が締結されています。路線はNAC側の約57kmに加えて、ギザ〜6thオクトーバー・シティ方面の約42kmが建設中です。

背景

新行政首都（NAC）は、カイロの過密を緩和し行政機能を移転する国家プロジェクトで、2015年に構想が本格化しました。都心から東へ約60〜75kmの砂漠地帯に新都心を造成し、各省庁や議会、大統領府などの移転が段階的に進められています。開発は長期にわたり、初期フェーズだけでも巨額の投資を要し、完成は段階的に2040年頃まで見込まれています。

NACの象徴となる中央業務地区（CBD）は、中国の国有大手「中国建築（CSCEC）」が受注・建設を進める区域で、アフリカ最高峰の「アイコニック・タワー」（約385.8m）を含む超高層群が立ち並びます。資金面では中国系銀行の関与が指摘され、「一帯一路」構想の対外プロジェクトとしての色彩も強いとされています。運営・管理をCSCECが担う方針も報じられており、中国勢の関与は建築・資金・運営の各面で継続すると見られます。

用語解説

新行政首都（NAC）とは、エジプト政府が行政機能を移転するために建設中の新都心です。過密化したカイロ中心部の交通負荷と老朽インフラの課題を軽減し、東方の新開発地に官庁街・住宅・商業・文化施設を統合的に整備します。学術的にも、アフリカ諸国で進む大規模ニュータウン開発と投資・土地供給の関係が論じられている注目事例です。

モノレールとは、単一の軌条上を走行する都市交通システムで、用地幅員が比較的狭く、連続橋梁上に高架で整備できるため、既存市街地でも比較的短期間で建設できる特徴があります。ドライバーレス（自動運転）は運行の安定性や保守性の向上、ダイヤの柔軟性に資する一方で、中央制御設備や冗長化設計など初期投資が大きくなる傾向があります。今回のNACモノレールは地下鉄・LRTと接続し、広域交通ネットワークのハブ機能を担います。

ニュースの見解

日本人の海外不動産投資家にとって、11月9日のモノレール開業はNACの「実用ステージ」への移行を象徴する出来事です。大量輸送インフラの稼働は通勤圏・通学圏の拡大、居住ニーズの顕在化、テナント需要の底上げを通じて、賃貸利回りや売買需要にプラス要因となりやすいです。

特に地下鉄3号線・LRTとの接続は、旧市街・新都心間の移動コストを下げ、NAC内の住宅・オフィス・リテールの稼働率改善を後押しします。中国CSCECのCBD運営関与や資金ラインは、超高層CBDの完成・稼働を加速させる可能性がある一方、エジプト・中国の政策動向や対外関係性の変化が与える影響を注視する必要があります。

投資判断では、①段階開業ゆえのテナント付け・引渡し時期のズレ、②為替（エジプト・ポンド）のボラティリティ、③管理・運営の体制確認（O&Mの長期契約や共用部維持水準）、④住宅とオフィス・商業の需給バランス（先行供給の消化状況）を、個別物件ごとにデューデリジェンスすることが重要です。