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2025年4月15日、ニッケイ・アジアは、バングラデシュ政府が2025/26年度(同国会計年度は7月開始)に国家予算を初めて「前年度比で縮小」する方針を固めたと報じました。記事はダッカ発で、記者はSyful Islam氏です。報道によれば、国際通貨基金(IMF)のチームがダッカで公的部門財政を精査するなか、近年の「予算執行率の低迷」と、前政権(ハシナ政権)の膨張的な予算運営は合理的でなかったとの現政権側の評価が背景にあります。
IMFは4月16日に訪問結果を公表し、FY25前半の実質成長率は前年同期の5.1%から3.3%へ減速し、政治的不確実性や引き締め策が投資を下押ししたと指摘しました。歳入拡大と補助金の見直し、外部資金繰りの安定化が課題と整理されています。
その後の展開として、6月23日にIMF理事会が第3・第4次審査の同時完了を承認し、約13億3,000万ドルの資金アクセス(うちECF/EFFで約8.84億ドル、RSFで約4.53億ドル)とプログラムの6か月延長・増額が決まりました。IMFは高インフレや低成長、外貨不足といった厳しい環境下でも「概ね良好」と評価しています。
一方、政府は2025/26年度予算で赤字を縮小し歳出を引き締める見通しを示し、歳出構成の精査と歳入強化(税収の底上げ)に舵を切っています。市場報道では、財政赤字を対GDP比で縮小する方針が伝えられています。
政治面では、2025年5月に暫定政権が前与党アワミ連盟の活動を停止するなど、政情の流動性が続きました。政治・制度改革の行方は、財政運営と投資環境に直結する注目点です。
背景と文脈
バングラデシュは2023年以降、外貨準備の低下と輸入代金の逼迫、インフレ高止まりを受け、ECF/EFF/RSFの3本柱でIMF支援を受けています。IMFはたびたび税収/GDP比の低さ(歳入動員の弱さ)や補助金の効率性を課題とし、付加価値税(VAT)や所得課税の改革、歳出の的確化を求めてきました。FY25前半の成長モメンタム鈍化もあり、「使い切れない大型予算」から「実行可能な縮小予算」へ舵を切る合理性が高まった格好です。
用語のかんたん解説
会計年度(Fiscal Year):同国は毎年7月1日開始・翌年6月30日終了です。ニュース中の「FY25」は2024年7月〜2025年6月を指します。
ECF/EFF/RSF:IMFの融資枠です。ECF(貧困削減・成長支援)、EFF(構造改革支援)、RSF(気候・レジリエンス分野支援)で、財政・外部収支の安定化と構造改革の実施を条件に資金を供与します。
予算執行率:議会承認の歳出が年度内に実際に支出された割合を指します。執行停滞は景気下支えの弱さや事業遅延につながるため、IMFレビューでは「使える規模で組む」現実的な編成が重視されます。
財政赤字の対GDP比:経済規模に対する赤字の大きさを示す指標で、持続可能な水準が投資家の信用認識に影響します。2025/26年度は赤字縮小見通しと報じられました。
ニュースの見解
日本人の海外不動産投資家にとって、今回の「縮小予算+IMF審査継続」はリスクと安心材料が交錯する内容です。まず、歳出の選別と補助金見直しは、電力・ガス等の公共料金やインフラ工事のスケジュールに影響し得ます。これにより、建設コストや竣工時期のブレが一時的に拡大する可能性があります。一方で、実現可能な規模の予算編成とIMFレビューの継続は、マクロ安定と対外信用の補強に資するため、外貨調達や為替安定(タカの急落回避)にプラスです。
投資戦略としては、①為替前提の保守化(円建て想定利回りの感度管理)、②竣工時期・引渡し条項を売買契約で明確化、③家賃の通貨建て(タカ建て・ドル連動・円換算の運用方針)を早期に決め、④エリア需要の粘り強さ(大学・医療・モール近接の実需)を重視する姿勢が有効です。短期の「見通し難」に対して、賃貸需要の基礎体力がある区画とデベロッパーの実行力に軸足を置くと、中期の安定キャッシュフローを取りにいけます。なお、政情は依然として注視が必要で、制度改革の進捗と税・外貨規制の運用を四半期ごとに確認することをおすすめします。

 
					 
					