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2025年10月28日、ダッカの主要紙は「バングラデシュ経済は選挙が実施され新政府が発足するまで本格回復は難しい」とするレポートを掲載しました。報道によると、IMF(国際通貨基金)との総額47億ドルの支援枠(2022年合意)のうち、第6次分の放出は民選政権の樹立後に判断される見通しです。国内総選挙は2026年2月の実施見込みで、IMF調査団は10月29日にダッカを訪問し、中央銀行や関係当局と協議する予定とされています。民間投資の停滞、インフレ高止まり、与信の鈍化、設備財輸入減少、FDI(外国直接投資)の落ち込みなど、複数の弱含み指標が同時に指摘されました。
10月18日には、ダッカのシャージャラル国際空港カーゴ・ビレッジで大規模火災が発生しました。衣料サンプルや重要書類が焼失し、輸出の柱であるRMG(既製服)産業の納期と受注に影響が出ています。年末商戦を控えた時期の事故で、輸送・通関の再手配が必要となり、短期的な物流ボトルネックが懸念されています。火災は長時間を要して鎮火し、損害額は巨額に達する可能性があると伝えられています。
何が起きているのか(数字と発言)
IMFは第6次支援の放出条件として、改革継続の確約や政策の信頼性を重視しているとされています。産業団体幹部、元規制当局者、大学教授などは「政治的不確実性が投資判断を麻痺させている」と発言し、選挙日程の明確化と秩序だった実施を求めています。民間部門の与信伸び率は歴史的低水準に低下し、設備投資関連の輸入は落ち込み、FDIも減速しています。
空港火災が不動産・建設サプライチェーンへ与える波及
カーゴ施設の火災は、衣料に限らず医薬品、電子機器、通信関連、SMEの貨物にも影響しました。輸出向けサンプルや検品品の焼失により、再生産・再手配・再通関が必要となり、入出荷の遅延が生じています。輸入依存度の高い建設資材や設備機器の納期にも波及し、住宅・商業開発プロジェクトの工期遅延やコスト上振れの火種となり得ます。
背景:IMFプログラムと「政治的信認」
2025年中盤には第4・第5次トランシェが承認されましたが、その後は選挙を巡る政治日程が前面化し、第6次は選挙後の判断に移行しました。IMFは為替制度や歳入改革、銀行セクターの健全化などマクロ安定に資する改革の継続を重視しており、外貨準備・金利・通貨制度の枠組みの整備が焦点になっています。
用語の短い解説
IMFの「トランシェ」とは、融資枠を段階的に分けて支払う仕組みです。各回の支払いは、事前に合意した改革や数値目標の進捗確認を経て承認されます。「クロール制(クロール・ペグ)」は、為替を一定のルールに沿って段階的に調整し、急激な変動を抑えながら市場実勢に近づける運用です。RMGは既製服産業の略で、バングラデシュの輸出・雇用を支える中核産業です。
ニュースの見解
日本人の海外不動産投資家にとって、2025年10月時点のバングラデシュは「政治イベント待ちの時間帯」にあります。IMF第6次支援が新政権発足後に先送りされる可能性は、為替・金利・税制・外資規制などの政策確度が確認できるまで、資金供給や投資マインドが慎重化することを意味します。加えて、国際空港カーゴ火災は短期的な物流停滞を引き起こし、輸入建材・機器の納期やコスト見積りに上振れ圧力がかかります。
実務対応としては、引渡し時期が明確でない開発案件での遅延・仕様変更条項の厳格な確認、建設・什器の輸入依存度が高い案件のコスト・納期の再検証、タカ安シナリオを含む為替感度分析の実施、そして「IMF調査団の動き(10月末)→選挙(2月見込み)→選挙後の放出判断」という時系列をモニターすることが重要です。長期的には、IMF資金の継続、為替制度の透明化、歳入改革が進展すれば、都市インフラ・工業団地・住宅需要の裾野は再拡大し得ますが、当面はデューディリジェンスの深掘りと契約上の下振れ耐性を確保する局面です。
