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2025年9月8日、エジプトの新行政首都(NAC)を開発するACUD(Administrative Capital for Urban Development)のカーレド・アッバース議長は、2025年のNAC向け投資額が約500億エジプトポンド(EGP)に達したと発表しました。都市の総資産は約3,600億EGP、2025年年初来の利益は350億EGP、同年の税支払いは約90億EGPと報告。政府各省はすでにNACで業務を開始しており、今後は上下両院およびエジプト中央銀行も移転して「完全な行政・経済ハブ」へ移行する計画です。
また、ACUDは保有地の約30%を投資家に開放する方針で、金融街(New Financial District)では3,000〜5,000㎡区画を年内にオファーし、150〜200億EGP規模の資金調達を見込みます。さらに、1,800フェダンの工業団地は契約を完了し基盤整備が進行中。NAC第2期の建設は年明けに着工予定で、開発が次のフェーズに移ることが示されました。
数字で見る現在地
- 2025年投資額:約500億EGP(前年並み)
- 総資産:約3,600億EGP
- 2025年の利益(年初来):約350億EGP
- 2025年の税支払い:約90億EGP
- 土地放出:保有地の約30%(金融街では3,000〜5,000㎡区画を予定)
- 第2期:年明け着工予定
- 工業団地:1,800フェダンは契約完了・整備中
- 需要見通し:現フェーズで約5万人規模のサービス需要を見込み、段階的に拡大
新行政首都(NAC)の背景
NACはカイロの過密・老朽化問題を解消し、行政機能を集約して民間投資を呼び込む国家プロジェクトです。2016年着工以降、行政街区、中央業務地区(CBD)、金融街、教育・医療・商業、工業団地を段階的に整備。スマートシティ化(再生水利用、太陽光、電動バス、ロボティクス活用)を中核に据え、持続可能な都市モデルの実装が進んでいます。
中国企業の関与とランドマーク
CBDの超高層群は中国建設(CSCEC)がEPCで主導。象徴はアフリカ最高層の「アイコニック・タワー」で、外観完成から引き渡し段階へ。中国の資本・施工力がコア資産の形成を牽引しており、NACの国際的な信用補完の一端を担っています。
マクロ環境の追い風
政府は実体経済中心の新たな経済シナリオを掲げ、製造業・輸出・観光などへの重点支援を表明。2025/26年度には金利15%未満で計900億EGPのファイナンス枠を供給予定とされ、中小・マイクロ事業への資金注入も継続。信用供給と投資促進の両輪が、NACの需要創出と開発進行を支えています。
用語解説
- ACUD:NACの開発主体。土地売却、共同開発、インフラ整備を統括。
- フェダン(feddan):エジプトの面積単位。約4,200㎡。1,800フェダンは約7.6km²。
- CBD(Central Business District):中央業務地区。高層オフィス・商業・ホテルなどの中核機能を集積。
- CSCEC:中国建設(中国建築股份有限公司)。NACのCBD群やアイコニック・タワーを施工。
投資家が見るべき具体ポイント
- 金融街の区画売却:3,000〜5,000㎡の中規模ロットは、オフィス・サービス系テナントの受け皿。省庁・金融機関の移転進捗に連動して賃貸需要が顕在化。
- 工業団地(1,800フェダン):基盤整備が進む軽工業・物流のハブ。自由区等の優遇と組み合わせれば輸出・加工拠点としての妙味。
- CBDのコア資産:ランドマーク性の高いAグレード資産は、賃料プレミアムと出口戦略(売却・リファイ)を描きやすい一方、供給集中リスクの精査が必須。
- 政策ファイナンス連動:金利抑制・中小支援の政策と整合する用途(教育、医療、観光、IT/BPO等)は、稼働立ち上げと入居促進で優位。
ニュースの見解
日本人の海外不動産投資家にとって、「投資額500億EGPの維持」「土地の30%放出」「第2期着工確定」は、NACが計画通り“量から稼働へ”移るシグナルです。短中期では、①金融街の中規模区画での共同開発(JV)、②工業団地・物流での現地パートナー型賃貸事業、③CBDの完成資産または竣工間近物件の取得が実践的。
リスク側では、為替(EGP)ボラティリティ、インフラ引渡し時期、行政移転の進度、地政学(周辺情勢)をモニター。契約面では、USD建て価格・進捗連動払い、遅延ペナルティ、コスト・インフレのエスカレーション条項、鍵引渡し条件(ユーティリティ接続・検査合格)の明記、信託口座/エスクローで資金管理を徹底してください。政策金融の下支えが継続する限り、行政・サービス需要の立ち上がりは期待でき、2026年に向けてコア+バリューアッド戦略でのリスク調整後リターンが狙える局面です。