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2025年10月2日、英字メディアArabian Businessは、アラブ首長国連邦（UAE）のラスアルハイマ首長国（RAK）の不動産市場が過去8年で855％拡大し、2025年Q1の不動産取引総額は136.06億ディルハム（約35.6億ドル）に達したと報じました。比較対象は2017年Q1の13.6億ディルハム（約3.7億ドル）で、記録的な伸びが確認されています。統計はラスアルハイマ統計センター（RAK Statistics Centre）がラスアルハイマ市当局（Municipality）のデータに基づき公表。取引の最大シェアはモーゲージ（住宅ローン）関連が占め、投資家と実需の双方で金融利用が急増しています。記事はWill Milner記者名義で掲載されました。
同報道では、開発会社Major Developmentsのアンドレイ・チャラペナク（Andrei Charapenak）CEOが「投機主導から実需・長期保有への移行が起きている」とコメントしています。
背景と文脈
RAKは近年、観光・産業多角化・インフラ整備・規制整備を柱とする開発アジェンダを推進。これに伴い**金融を活用した所有（finance-backed ownership）**が広がり、購入者層が拡大しました。UAE全体でも2025年は不動産取引が堅調で、RAKの台頭は国内トレンドとも整合的です。
さらに市場見通しとして、2030年までにRAKの住宅ストックが約2倍になるとの推計も報じられ、供給拡大と都市機能の高度化が見込まれます。
用語解説
- モーゲージ（Mortgage）／住宅ローン：不動産購入資金を担保付きで借り入れる仕組み。RAKでは取引の最大シェアを占め、市場の実需化・長期保有化を示す指標とされています。
- Finance-backed ownership（金融支援型の所有）：自己資金だけでなくローンや金融商品を活用して不動産を取得する形態。投機より居住・長期運用の比重が高まるときに拡大します。
- RAK Statistics Centre（統計センター）：首長国内の経済・人口・不動産等の統計を取りまとめる公的機関。今回の2017年Q1→2025年Q1比較の一次出所。
データで読む市場
- 取引総額：2017年Q1 AED 1.36bn → 2025年Q1 AED 13.06bn（+855％）。
- 牽引要因：モーゲージ取引が最大シェア、つまり実需・長期保有志向の構造転換が進行。
- 企業の声：「投機を超えた安定・インフラ・長期価値志向が強まっている」（Major Developments CEO）。
関連トピック
- UAE広域トレンド：2025年はUAE各首長国で投資家信認と規制の柔軟性が追い風に。RAKの存在感は**“第三極”**として確実に上昇。
- 供給見通し：2030年に向け1.1万戸超の新規供給が予定・進行中との推計。投資・居住両面で選択肢が増える一方、プロジェクトの選別が重要。
ニュースの見解
日本人の海外不動産投資家向けポイント
- ファイナンス環境の進展：モーゲージ主導の拡大は、現地金融を使った資金計画が立てやすいことを示唆。ただし、非居住者への貸出条件（自己資金比率・金利・就労証明・収入通貨・担保評価）は銀行・案件で差が大きい点に留意。RAKでの実需化は空室・賃料変動の下振れ耐性を高める可能性があります。
- 需給の読み：2030年へ向け供給が増える見込み。立地（ビーチ／都市核）、用途（ホリデーホーム・長期賃貸）、運営事業者の実績で差が出やすく、管理品質・稼働率の実測データを重視したデューデリジェンスが必須。
- 比較優位と分散：ドバイ・アブダビに比べ取得価格と維持コストの相対的な割安感が指摘される一方、流動性（売却のしやすさ）はエリアや物件種別で差が出ます。UAE内分散（ドバイ×RAK）や建設段階×完成物件の時間分散が有効。
- 実務アクション：
- 統計センターが公表する区画別・タイプ別データと、販売会社の在庫・引渡しスケジュールを突合（供給過多回避）。
- **モーゲージ事前審査（AIP）**取得で為替・金利変動リスクを管理。
- 賃貸実需の強い地区（学校・病院・幹線アクセス）を優先、運営委託契約の手数料とKPI（稼働率・NET利回り）を明文化。
結論として、今回のニュースはRAK市場の**“金融を伴う実需化”と長期的な都市成長ストーリーを裏づける材料です。日本の投資家にとっては、適切な融資条件下での中長期インカム投資の候補になり得ますが、供給増の局地的な過剰や流動性の地域差を織り込んだプロジェクト選別・出口戦略**が不可欠です。